フランケンワインとボックスボイテル― ご挨拶にかえて

ドイツには13のワイン生産地域があります。
その中で異色のワインを生産することで知られているのがフランケン(Franken、下図のグレーの地域)です。


【地図提供「旅行のとも、ZenTech」】

フランケンはバイエルン州北部に位置する地方名で、ブドウ畑の大部分は、蛇行して流れるマイン川とその支流の沿岸斜面に広がっています。
ブドウ畑の総面積は6000ヘクタール。現在はドイツで6番目に大きな生産地域です。
わが国では、ドイツワインの生産地としてモーゼル・ザール・ルヴァー(Mosel-Saar-Ruwer)、ラインヘッセン(Rheinhessen)などが知られていますが、フランケンの土壌は主に石灰岩層。そして寒暖差の激しい気候により、他の地域と大きく特徴が異なったワインが産出されるのです。

甘口が主流で口当たりが優しいドイツワインは一般的に「女性的」と評されることが多いのですが、フランケンワインはその引き締まった硬質の味わいから「男性的」と形容されるのが常です。
力強いコクときりっとした飲み口は他の生産地域に例を見ないもので、辛口で個性と美質がいっそう際立つこの地のワインは、古くから愛好家に絶大な支持を受けてきました。

フランケンワインをこよなく愛した著名人として、真っ先に挙げられるのがヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテです。
ドイツを代表する文豪は1806年6月17日、妻への手紙の中で、こんなお願いをしています。

ぜひ何本かのヴュルツブルガーを送ってくれ。というのも他のワインはひとつとして私にはおいしく思えなくて困っている。いつもの大好きな飲み物を切らしていると、私は不機嫌になってしまうのだ!

ゲーテのいう「ヴュルツブルガー(Würzburger)」とは「ヴュルツブルク産のもの」。フランケン地方の中心ヴュルツブルク(Würzburg)は、今も昔もワインの産地および集散地です。有名なブドウ畑が存在するこの町で造られたフランケンワインがゲーテのお気に入りだったのでしょう。
現在でもゲーテのような熱狂的ファンが多いフランケンワイン、中味だけでなく容器の形も個性的です。
ずんぐりと丸みを帯びたボトルは「ボックスボイテル(Bocksbeutel)」と呼ばれています。

フランケンワイン愛飲家にはおなじみのこのボトルの発祥は18世紀。
ヴュルツブルクを代表するワイナリー「ビュルガーシュピタール(Bürgerspital」が、当時横行していた悪徳ワイン業者の偽ワインと区別するため、ボックスボイテル(ヤギのふぐり)型の容器にワインを詰め、役所の蝋で封印したことがその始まりです。
これこそ本物のフランケンワインである、という証明の必要が生んだ形状といえますが、この伝統を継承し、今日でもボックスボイテルにはクーベーアー(QbA)の等級以上の高品質ワインしか詰めることが許されていません。すなわち、このユニークな形のボトルに入ったワインというだけで、品質の高さは保証されているというわけです。

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日本においてはなぜか「ドイツワインは甘い」という偏見が定着し、酒類を販売しているお店の棚からドイツワインのスペースがどんどん狭くなっている昨今です。
ドイツという国に愛着を抱き、かつて縁あってヴュルツブルクに1年2ヶ月滞在する機会に恵まれた私、こうした片寄った見方に対し少なからぬ不満を覚えておりました。
このたび、わが国ではいまだ十分に知られているとは言いがたいフランケンワインの専門店を開くに至りましたが、「この素晴らしいワインの普及に力を注ぐことで、そのような偏見を払拭したい」というのが一番の動機です。

他国の辛口ワインにも決してヒケをとらぬどころか、それらをしのぐほどの良質の辛口がドイツワインにもあることを、ぜひとも知っていただきたい ― そんな思いから、ワインショップ・マリーエンベルクは誕生しました。
良心的な価格で、私自身が紹介したい!と思ったフランケンワインを提供させていただきます。
ご愛顧のほど、よろしくお願いいたします。


ワインショップ・マリーエンベルク
店主敬白

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